2012年2月25日土曜日

女性が暴力被害にあってPTSDになること

女性の安全と健康のための支援教育センターの研修において学んだことを私なりにまとめてみる。
ここでは特に性被害を受けた女性にもたらす影響において述べる。
PTSDとは心的外傷後ストレス障害という疾病で、比較的新しい概念である。

歴史的に見ればベトナム戦争帰還兵の精神的な病、阪神淡路大震災によるトラウマといったところからクローズアップされた。

人が突然受け入れがたい出来事に遭遇したとき、圧倒され、深い傷ツキの中で、生き抜くための一つの自分を守るためのシステムでもある。
混乱した神経により、あらゆる症状が発生する。
解離、過覚醒、回避、麻痺、無感覚、分裂、我を失い、これまで信頼していた世界観が崩壊されるほどのことである。

こういった症状があることが理解されつつあるのに、いまだに性被害を受けた被害者にそれが当てはまることをどれだけの人が理解しているだろうか?
被害者支援にかかわる警察や医者、支援者が最も理解していなければならない人たちのどれだけがわかりえるだろう。

そういった人たちが、この女性の安全と健康のための支援教育センターの研修をうけてほしいものだ。
幼いころからの女児に対する知っている人からの性被害は、これまでないものとされ無視されてきた。児童虐待に性虐待という言葉が使われ、実の父親はじめ、家族や親族から性虐待を受けている女児の実態が、少しづつ明らかにされているのである。
女性への暴力について学んでいく中で、被害にあっている女性と会うことは、むしろ多いのだ。
CAPプログラムを提供している中でも出会っている。

被害女性がその後の人生をPTDSに苦しめられ、どれほどつらいしんどい思いを抱えて、次々とさらなる被害を受ける状況に身を置(決して本人が望んでいないのだけど、精神的な痛手がもたらしてしまう)いるのか本当に想像に絶するのだ。

性被害にあって警察に訴えるのは、ほんの4~6パーセント。
暴力の中でも性に関することは、人間の人格を破壊し得るものだ。戦争でも捕虜に対して性的に屈辱を与えることが最も相手にダメージを受けさせるものと認識されている。

訴えるだけでもこの社会は相当な勇気が必要だ。それなのに、このPTSDになってしまうほどの痛手を受けた女性に対して、「どれほど抵抗したのか?」や「被害の細かい状況を説明せよ」など、求めることが、さらなる傷を負うことは、簡単に想像できるはずなのに、それが無視されている現状だ。

まずは、専門家や、寄り添う人の存在があり、継続的な支援がなければ、さらなる傷を負うだけの訴えを誰ができるというのだ。
最近の被害だけでも、大学生による、また長井の消防士による集団レイプ、オリンピックで、金メダルを取った選手によるものなど、加害者側が、なかなか罰せられない社会自体が、女性を男性と対等に見ていない何よりの証拠であるとさえ感じる。

安心して被害を訴えられる日は来るのだろうか?
その始まりは、男女の平等対等な関係性が当たり前にならなければ、遠い世界に思えてしまうほど、今の社会の無理解を嘆くしかない。

次のような知識を少しでも持って、暴力被害にあった人に寄り添いたいものだ。

1、PTSDとほかの疾病との関連性
  本人に受け入れがたい外傷的体験は、解離という形をとって、生命を維持しようとする。
当たり前だが、その時のことを覚えていない。どうやってどこにいったか覚えていないことは十分あるのだ。声が出ない。知覚、感覚がない、多重人格、全身にわたる痛み、さまざまな依存、摂食障害など。
2、PTSDと人格障害
  境界性、回避性、妄想性などの人格障害

衝撃的な出来事により、周りの人や社会に対して、根底から信頼を失うことがある。そうなると、すべてが自分を傷つける存在に映る。世界がガラガラと崩れてしまう感覚。
周りは信用できない!
人とどう接したらいいかわからない!
自分をどう信用したらいいかわからない!
世の中が続くのか、自分は生きていていいのかさえわからない!
こういった傷や思いを本人が自覚していない場合もある。
何が安全か危険かがわからず、自分から危険な状況に身を置いてしまう。
フラッシュバックによりパニックになる!時間が止まってしまう。

こういった困難を抱える人がいることを知っておこう。

シェルターや暴力被害支援の専門家につながり、少しづつ回復して生きことはできる。
長い道のりではあっても、回復の後に新しい人生、より輝く人生を送っている人もまたいるのだ。

エンパワメント山形が提供する「心のケア講座」はその一つになりえればいいと考えている。

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